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生きづらい日本の一側面を良く表す。評価は★2つ。
タイトルにある「日本を降りる若者たち」とは「外こもり」の人たちです。現代の「竜宮城」から帰れなくなる転落の黄金パターン(バックパッカー→沈没→外こもり)が描かれます。旅や外こもりは恐ろしい麻薬(ソフト・ドラッグ)です。オーバードーズ(over dose)は死を招きます。自分を救うのは自分自身。「あの時期が自分には必要だった。無駄ではなかった」と後から自分で意味づけられるよう、みんな闘ってください。
タイトルにある「日本を降りる若者たち」とは「外こもり」の人たちです。
「日本でひきこもるのではなく、海外の街でひきこもる若者たち」(p17)であり、バックパッカーが言う「沈没」が常態化し、「旅」が抜けて、海外という竜宮城に住み続けるようになってしまった人たちのことです。こういう人たちは僕の周りにもたくさんいます。
というか僕だってそうです。この本に出てくるカオサンの日本人宿(ドミトリー)。細い路地を入っていった先の中庭のような広場。例のあそことすぐにわかりました。他人事ではありません。
「こういう旅を体験した人ならわかると思うが、ひとつの街に辿り着き、二日、三日と滞在していると、その街の居心地がどんどんよくなってくる。気に入った安宿もみつかるし、安くてうまい食堂の場所もわかってくる。この街にいれば、安穏とした日々がすぎるのだ。しかしそんな毎日は旅ではなかった。ある夜、『これではいけない』と自分を奮い立たせザックに荷物を詰めるのである。翌朝は早めに起き、バスターミナルに向かう」(p14)
ここで書かれている旅立ちの朝。その感覚や気分。「旅をしているから認められる」というバックパッカーを縛る不文律。そして自らそれを否定する「沈没」の甘い誘惑。おそらくある程度、旅したことがある人なら誰でもわかるものです。
実際、僕もそう思いました。2003年夏、カンボジア。全てがバカみたいだ! いままで何をこだわっていたのだろう。僕は自由だ! 旅バンザイ!
掲載した図はこの本の帯に描かれていた4コマ漫画です。バックパッカーをやった人ならわかると思いますが、この漫画は、パッカーの感覚を良く伝えています。まさにこんな感じです。というか、みんなこんなでした! 台詞も抜群。
…でもだからこそ、その魅力の虜になり、そこから戻れなくなるのも、ある意味で当然なんです。戻って来られなくなるんです。だって終わりのない旅は恐ろしいほど魅力的で、辿り着いた竜宮城は常に蠱惑的なのですから。
麻薬は大麻や覚醒剤だけではありません。あらゆる刺激剤、消費対象物は麻薬(ソフト・ドラッグ)となりえます。過剰摂取は生物的な死だけをもたらすわけではありません。その前に社会的な死を私たちにもたらします。
日本から降りてみた。気持ちいい。しばらく帰りたくない。帰るべき場所も確保している。いつでも帰れる。いまは一休みしているだけだ。ずるずるずるずる。まだまだ旅していない国がある。楽しい旅の出会いがある。ずるずるずるずる。モラトリアム(執行猶予)を続け、決断を先延ばししている内に日本は変わっていく。自分もまた変わっていく。そして完全に戻れなくなっていく。竜宮城から出られなくなっていく。
旅は麻薬です。外こもりも麻薬です。恐ろしい麻薬(ソフト・ドラッグ)です。うぶな私たちはその魅力の前に抗すことができません。すぐに溺れてしまいます。むろんその先で新たな人生を見つけた人はそれでいいんです。でも旅が竜宮城にしかならない人が恐ろしい数いることも事実です。
僕の場合は「必ず帰らなければならない」と思っていたことが功を奏しました。戻るべき場所と、具体的なやるべき事を残してきたことが旅を続け、旅から帰る原動力となっていたのです。その意味では修士の途中で行ったのは良いことでした。結果オーライ。卒業してから行ったら、帰って来られなくなっていたかも知れません。
僕は中国の麗江、チベットのラサ、ネパールのポカラで沈没していた口です。そういうことが実感としてわかるからこそ、ここで描かれているような「若者たち(40代の人も普通にいる)」の人生は、決して他人事ではないんです。
外こもりは日本で稼いで海外に出るスタイルが典型的とされています。そして僕はこの文章を何人もの友人を具体的にイメージしながら書いています。その人生の善し悪しとは別に、僕は彼らが幸せになってくれればいいな、と思っています。おそらくこの著者の下川裕治も同じです。僕はその気持ちが良くわかります。
ひきこもりだろうが外こもりだろうが、「あの時期が自分には必要だった。無駄ではなかった」と後から自分で意味づけられたらそれで良いんです。自分の人生を受け入れられたら、通過儀礼として肯定できたら、それで良いんです。
人は自分で自分を救うものです。問題は彼らが人生を積極的に意味づけられないことにあります。人生に後ろ向きだったり、自分を誤魔化していたりすることが問題なんです。麻薬(逃避)による安い癒しは結局、何も生み出しません。必要なのは戦うことです。自分自身と。そして世界と。僕はドラッグに溺れる人たちをこそ陰ながら応援しています。